お寺あれこれ 43

人生の終盤 四住期の生き方

今年の夏野菜は、西瓜、メロン、ピーマン、キューリ、ナス、ゴーヤなど植えました。日々の作業として、朝は野菜に水をやり、野菜の成長していく過程を見て、自己満足して楽しんでいます。今日は病院に定期健診の予約が入っていましたので、その足で亀岡駅まで行きますと、その途中若い青年の方が散歩なのか手持ちのビニール袋にゴミを拾い集めておられました。朝から私の気持がすがすがしい明るい気持ちになり、その青年の方に「こころの中で」有難うございます。と声を掛けました。この年になるとわがままな事しか考えず、自分は永年働いたから働くのはごめん被りたいと怠け心が常日頃からわいてきます。日本老年学会は、現在65歳以上を「高齢者」と定義しています。この「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者は65歳から74歳は「准高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と提言をしています。僧侶や住職方も寺だけの収益では寺の維持管理が大変ですから、また自分も外に職業を持ち働からなければ生活ができない寺がほとんどではないでしょうか、私などはねっからの無精者ですから自分の好きな時間に好きなようにしか動けない性格です。今から別に職を持つことなどは到底考えられません、私たち住職には定年がありません。自ら引退しない限り住職が続けられます。今日も同期の住職さんから、「これからが味が出る年齢やからお互い体に気を付けなあかんで」と祖山で話をしていました。それはそれでお互いうれしいことですが、もう一人の知人は同じ年ですが、今も寺の副住職です。ご本人も「一世代とんでしまうがな」と笑っていましたが、彼の心の中は複雑な心境だったと思います。生涯現役で、今までの経験と技術が生かされるのはいいけれど、若い方達の働く場所がなくなるのでは、と余計な心配するのはわたしだけなのか、私はどんな職業でも20代後半~50代前半が仕事も人生もエンジンフル回転の時期で人生第1ラウンドと考えていました。そして、早めに人生第2ラウンドとして50代前半から75歳前後まで、この期間「幸せな老後とは」を考えながら、自分の趣味や生き方が生かせるような仕事をお探しになってはどうでしょうか、それと同時に心の断捨離をする。いままで築いてきた肩書や物への執着、贅沢な生活から清貧な生活へと人生を考え直すこと、これはわたしの反省を含めて「今までの自分を捨てる」捨てなければ、こころに新し人生など入ってこないと思います。「断つ、捨てる、離す、」とは、自分の煩悩を断つ、物を喜捨(布施)する、執着を離れる、ことでお釈迦さまが説かれた「諸行無常」「諸法無我」縁起の教えを人生に生かし心を整理して我執(煩悩)から解放する時ではないでしょうか、今政府は働け働けと雇用制度や社会保障「年金支給の延期」も考えているようです。本音は老後も年金だけでは生活ができないので、生涯現役で働かざるを得ないのが現状だと思います。高齢者の定義を年齢で決めるのは仕方ないことですが、経済的な面だけで、幸せな老後は送れません。幸せな老後には世代間の助け合いや私たち自身の人生観や老後に対して若い時からの準備が必要です。
古代インドでは、成人男性は四住期という生き方(社会習慣)があった、人生を四つに分けて、最初はいろいろな事を学ぶ学生期、次は結婚をして家庭生活を送る家住期、次は子供に家督を譲り自然のなかで人生を反省する林住期、最後は死に場所を求めて放浪する遊行です。お釈迦さまも例外ではなくこの四住期にそった一生を終えられました。大法輪「2005.4」に作家の青木神門さんの「再びインドを訪れて」という記事が載っていました。内容は「王舎城へ通じる道などは凹凸の砂利道だったのかアスファルトになっていたりする。ー略ー人力車がオート三輪に変わっても、変わらないのは牛である。人と車が行き交う雑踏のなかを悠然と牛が放浪している。そんな牛をあちこちで見かけるうちに、ヒンズーの世界に四住期という思想があったことを思いだした。ー略ーわたしは牛たちを見ながら四住期のことを思ったのは、雄牛は農耕や荷馬車を引くことができなくなったら、牝牛は子供を生めなくなり乳が出なくなったら、その時点で放し飼いになることを知ったからである。要するに牛も死に場所を求めて遊行しているように思えたからである。それをインド人は牛が老いて死ぬまで優しく見守っている。人生を反省するどころか、シルバー人材センターまで作って死ぬまで働かされるどこかの国とは価値観が違う。私は道路の真ん中に悠然と座っている牛を見ながら四住期的生き方も悪くないなと思った。牛の目の中に悠久の雲が流れていた。」ということです。この四住期の生き方も、現代の私たちの人生にも学ぶべきものがあるように思います。

 

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